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アピウア
Apiua
「ヴェルディッキオ・カステッリ・イエージ」と言えば、イタリアワインの中でも広くその名を知られている白の一つ。古くはピエモンテのバローロに続き、「区画(Cru)ごとの個性を表現でき る」、そう言われる可能性を見出された背景もあります。しかし、それは実現されることはなく、近年は「大量生産の代表格」として、世界中に知られる事になってしまいました。 このブドウ、そしてクプラモンターナの可能性に興味を持ったのが、当主であるロベルト・カスティニャーニ。彼は元来ワインの 造り手ではなく、建築デザインを生業としてフランス、パリで暮らしていました。その時に出会った「ヴァン ナチュール」に衝撃を 受け、ワイン造りの世界へ飛び込んだという人物。
次第にワインを飲むだけではなく、その魅力を体験したいと考えるようになったロベルト。当時、最も親しかったジル・アゾーニ (Le Raisin et L‘Ange)で働かせてもらい、2度の収穫、醸造を経験。イタリアへ戻り、妻フランチェスカの故郷であるマルケ州、クプラ モンターナに移住。そこでヴェルディッキオの魅力、クプラモンターナのポテンシャルを感じ、ワイン造りを決意。2018年、唐 突ながらマンチャーノ(Manciano)にある高樹齢の畑(3ha)を手に入れたロベルト。結果、資金の大半を使い果たしてしまったため、カンティーナ、醸造設備など、ほとんど資金がない状況でのスタートとなります。
クプラモンターナは標高500mを越える土地で、勾配が激しく斜面に富んだ畑が多い。そして石灰質、粘土質が豊かで、石灰の影響で土地が白く見えるほど。最も有名なサン ミケーレ(San Michele)は石灰、粘土が大半で白亜質がみられることが特徴。標高が最も高く、日照に恵まれた土地。それに比べ、マンチャーノは斜面が多く、ポジションによって地質が複雑に変わるのが特徴。谷間に位置する場所も多く、日照は決して恵まれているとは言えません。「しかし、それが近年イタリアの猛暑の影響を受けにくい」、そう話すロベルト。地質は同じく石灰が多く、砂質が多く入り、粘土質、マール(泥炭岩)、白亜質と複雑に入り混じった個性を持っています。畑は合計3ha、上下に分かれ上の畑(1976年植樹、ヴェルディッキオ、トレッビアーノ少し、マルヴァジーア少し)と、下の畑(1960年植樹、ヴェルディッキオ、マルヴァジーア2列)、畑で は基本耕すことはなく、雑草が茂ってきた場合のみ、年に2~3度刈り取るのみ。銅と硫黄についても最低限の使用に抑え、自然環境を尊重した栽培を徹底。また、特筆すべきは高樹 齢の畑のため、新しい苗木は植えず、プロヴィナージュによって植樹を行う。フィロキセラの問題はもちろんゼロではないが、「フィロキセラの大流行より150年経った今、当時のようなリスクが同様にあるとは思っていない。周囲の畑もみんな台木を使っているのなら、蔓延も起きないのではないか?」そう考えるロベルト。そして何より、やはりピエディ・フランコ(自根)のもつ魅力(樹のバランス感、果実の表現力の強さ)にとても興味があると話す彼。 醸造についてはジル・アゾーニで働いた経験、そして自身が畑で感じるものをベースとし、「ワインは畑で造るもの、ブドウは美しさよりも健全さ」、を大切にしている。「長い時間をかけた醗酵の中で、酵母が死に、新しい酵母へと引き継がれながら続いていく。同じブドウだとしても、隣り合う樽それぞれで、醗酵の表情も違うし結果も異なる。決して同じ現象が起きないもの。はじめから、何か添加物を加えたワイン造りは頭の中にない」。教わるだけでなく、自身の体験から学び、先駆者の言葉に確信を持ち、迷わずワイン造りを行うロベルト。今回入荷の2019年がファースト ヴィンテージとなります。2019年で4000本強の生産。2020年も5000本程度。生産量の少なさはもちろん、カンティーナの狭さは驚愕に値します。まさにガレージを間借りして造られるワインでありながら、豊かなインスピレーションと、高いポテンシャルを備えたヴェルディッキオ。これがファーストヴィンテージだという事実は、想像を遥かに超え、初めて体験するような感覚でした。彼らのこれからが本当に楽しみであり、まだあまり良い造り手が少ないマルケに、新しい可能性を見 せてくれる素晴らしい造り手です。