ドミニオ・デ・アタウタ
DOMINIO DE ATAUTA
アタウタのオウナーであるミゲル・サンチェスは、現在もマドリッドで大規模にワイン販売業を営む名士である。彼はかつて、リベラ・デル・ドゥエロの見捨てられた一角アタウタの栽培家たちから相談を受け、畑とブドウの比類ない可能性を見極めて以来、樹齢が高い最良の畑を買い集め、全力をそそいで品質志向一筋のワイナリー「ドミニオ・デ・アタウタ」を築き上げた話は、いまやスペイン・ワイン界で知らない人はいない。そのミゲルから全幅の信頼を寄せられている醸造家フィリップ・スルデは、ロワールのワイナリーに生まれ育った、典型的なフランス人エノロジストである。が、ボルドー(ムートン・ロッチルドとレオヴィル・ラス・カズ)やチリ(サンタ・リタ)を経て、プリオラート(アルバロ・パラシオス)とシャトー・ネナンで働いた練達のスルデは、高い海抜(1000メートル)とプレ・フィロクセラのブドウに魅せられて、2000年よりこの地で仕事をすることに決めた。アタウタの自社畑は15ヘクタール(147パーセル)に達し、うち80%は接木をしていないプレ・フィロクセラのブドウ(ティント・フィーノ=テンプラニージョ)が植わり、樹齢100年以上のブドウも多数植わっている。スルデによれば、ミルデュー(うどん粉病)のおそれがないこの地は、「ビオディナミにとっての天国」である。2005年の晩秋、妥協と人為を排してひたすらクオリティに邁進するアタウタのワイナリーと、その崖下に佇むセラー廃墟群の上空高くを、鷲が群れをなして旋回するさまには、アタウタのワインにも通じる、この世の風情とは思えない隔絶した境地を感じさせた。
なお、樹齢100年以上のティント・フィーノを用いるValdegatiles, La Mala, Llanos del Almendroの各キュヴェはごく少量しか生産されず、2003年より各壜に通しナンバーが振られることになった。
Dominio de Atauta 2003 ドミニオ・デ・アタウタ2003
主として、平均樹齢60年以上の接木しないブドウからの産。収穫時期は2003年9月15~25日。ティント・フィーノをゴブレット式に整枝。除梗後、ステンレス・タンクとフランス製木槽で発酵させ、18日間の浸漬。14ヶ月のフランス産の小樽で熟成。冷却安定と濾過の処理をせずにボトリング。凝縮された黒系果実とハーブ/スパイスの香り。濃醇な風味に優雅さを漂わせ、後口にフィネスを感じさせる優品である。