ヤン・マティアス・クライン
Jan Matthias Klein
ドイツ、モーゼル地方の中部モーゼルに位置するベルンカステラル・ヴィットリッヒ地区 の歴史ある村Krov(クレフ)、栄えあるモーゼルの中でも特にその名を知られている畑
や生産者がひしめいている重要地区の生産者をご紹介いたします。
フランクフルトから ちょうど真西に150km、アルザスのストラスブールから北北西に約240kmの位置にある 村です。
歴史あるこの地域で非常に長い歴史を誇るワイナリーの若き現当主が革新的な試 みを始めました。
ヤン・マティアス・クライン、1977年生まれ。
ヤンはシュタッフェルター・ホフという862年創業、1100年以上の歴史を誇るドイツ最 古のワイナリー、かつ世界最古の会社の一つとして名を連ねるワイナリーを所有する
ファミリーに生まれました(ウィキペティアにも載っています)。
ヤンが家族のワイナリーで本格的に働き始めて15年をこえます。ヤンの父親は1960年代から除草剤や農薬の使用に疑念を持ちこの地域では珍しくオーガニックでの栽培
を開始しました。
父の意思を引き継ぎビオロジック栽培を徹底し、2012年に全ての畑 においてビオの認証を受けております。
そして2014年より醸造においてももっとストイックに酸化防止剤の使用を抑えることに努め始め(この土地では皆無です)、シュタッフェルター・ホフ名義のカテゴリーも担当しながらもまた別で自らの名前ヤン・マティアス・クラインを冠した新しいプロジェクトをスタートさせました。
これはシュタッフェルター・ホフのスタイルとは全く異なり、またモーゼルの典型的なスタイルとも全く異なります。
収穫してブドウを絞るところまでは両カテゴリーに大差はないのですが、彼に言わせると違いはいたってシンプル、3点のみだといいます。
1濾過しない
2清澄しない
3亜硫酸を添加しない
家族の所有する畑は約10ha。
リースリング75%、ミュラートルガウ10%、ソーヴィニヨンブラン4%、ピノノワール5%、残りはポルトギーザ―、ミュスカ、ゲレントが植わっております。
この畑の 中から選りすぐった区画2.5haのブドウ畑からヤンのワインは造られます。
1haに満たない場所もありますので生産本数もキュベにより2,000本から 10,000本程という少量生産になりますが、ヤンのやりたいことが目いっぱいに詰まった新しいモーゼルスタイルと言えます。
この土地の土壌はグレーまたはブルーのシーファーボーデンと呼ばれるスレート粘板岩の風化した土壌で、香り、味共に印象豊かなワインを生み出 します。
時に粘土質や石灰が混ざる区画もありますが、石灰質の混在しない土壌は、リースリングに類のないミネラリティをもたらします。
急斜面の畑 上部からこの村を見下ろすと、全ての家々の屋根がすべて青黒いものばかりだった事はとても印象に残っています。
スレートは日中の陽光を吸収し 夜間にゆっくりとブドウ樹に放出し、また陽光から素早くしっかりと熱を吸収して温まりやすく、 保温力が大きいのが特徴です。
モーゼルはナチュラルワインを造るにはおそらく最も最適な土地の一つだとヤンは考えています。
土地のPHが低く、この温暖化の時代に今も冷涼な 気候が維持されているためです。
常にどんなシーズンもブドウ樹の健康を維持すること、化学的アプローチは一切用いず自然の摂理に許された方法 でのみアプローチすることが重要で、それこそが畑における最大のチャレンジだといいます。
彼のワインのキュベ名は全て、ちょっと笑ってしまうような、たまには現代社会の皮肉のような、そして彼のユーモアがたっぷり表現された名前になっています。
ニルヴァーナの曲をワイン名に使っていることからもわかるように、彼は10代の頃から大のグランジやミクスチャーロック好き。
特にレイジ・アゲインスト・ ザ・マシーン、ビースティ・ボーイズ、メタリカなどがフェイバリットだったようで、このあたりの感覚がラベルの表現のベースになっているのでしょうか。
今の趣味は、ワイン以外では美味しいものを食べる事、家族や友人と一緒に過ごす事と優等生的な発言が返ってきましたが、彼のカーヴの横には酒場兼ライブハウスが併設されており、今でもバンドを呼んではライブ・パーティも行っているようです。
862年続く偉大な歴史を引き継ぐ事は相当なプレッシャーだったようです。
長く長く続くファミリーの未来の階段をこれからは自分が築いていく、この誇 らしく素晴らしいチャレンジと重圧を40代となり抱きしめることができるようになったそうです。
だからこそ、この歴史あるモーゼルの地でナチュラルワインの新しい歴史の1ページをも書き始めることができたのでしょう。
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